成年後見人に家族が選ばれるのは16.4%|親が元気なうちにできる備え

「親が認知症になったら、子どもが後見人になって財産を管理すればいい」。ご相談の場で、よくこうしたお話を伺います。ところが実際には、家庭裁判所が家族を後見人に選ぶケースは多くありません。

最高裁判所が公表した最新の統計(令和7年1月〜12月)では、成年後見人等に親族が選ばれたのは全体の16.4%でした。残りの8割以上は、司法書士・弁護士・社会福祉士などの専門職です。

この記事では、この数字が何を意味するのか、家族が選ばれないとどうなるのか、そして親が元気なうちにできる備えを、相続を専門とする行政書士の立場からお伝えします。

家族が後見人に選ばれたのは16.4%

令和7年に成年後見人・保佐人・補助人が選ばれた事件のうち、本人との関係は次のとおりです。

選ばれた人件数割合
親族(子・配偶者・兄弟姉妹など)7,014件16.4%
親族以外35,718件83.6%
 うち司法書士11,966件(親族以外の33.5%)
 うち弁護士8,903件(親族以外の24.9%)
 うち社会福祉士7,280件(親族以外の20.4%)

申立ての件数は43,159件で、前年より約3.2%増えています。制度の利用者は令和7年12月末時点で259,901人です。高齢化にともなって、成年後見はこれからも身近な問題になっていきます。

申立てのきっかけでいちばん多いのは「預貯金等の管理・解約」で、93.4%を占めます。親の口座からお金を下ろせなくなり、介護費用や入院費の支払いに困って申し立てる、という流れが典型です。

なぜ家族が選ばれにくいのか

成年後見の申立書には、後見人の候補者として家族の名前を書くことができます。ただし、誰を後見人にするかを決めるのは家庭裁判所です。家族が希望しても、そのとおりになるとは限りません。

たとえば次のような事情があると、専門職が選ばれやすくなります。

  • 預貯金や不動産など、管理する財産が多い
  • 不動産の売却や遺産分割など、専門的な手続きが控えている
  • 親族の間で、後見人や財産の扱いについて意見が分かれている
  • 候補者となる家族が遠方に住んでいる、または高齢である

家族が後見人に選ばれた場合でも、家庭裁判所への定期的な報告が必要です。財産が多いときは、専門職の後見監督人がつくこともあります。

専門職が後見人になると、何が変わるのか

専門職の後見人は、本人の財産をきちんと守ってくれます。そのうえで、ご家族にとっては次のような点を知っておく必要があります。

1. 毎月の報酬がかかり続ける

専門職の後見人には、本人の財産から報酬が支払われます。金額は家庭裁判所が決めますが、目安は月2万〜6万円ほどで、財産が多いほど高くなります。今の制度では、後見は原則として本人が亡くなるまで続くため、10年続けば数百万円になることもあります。

2. 家族の希望どおりに財産を動かせない

後見人の役目は、本人の財産を守ることです。そのため、孫への生前贈与、相続税対策のための不動産の活用や組み替えなど、「家族のため」の財産の使い方は基本的に認められません。自宅の売却にも家庭裁判所の許可が必要です。

3. 途中でやめられない

遺産分割や不動産の売却など、目的の手続きが終わっても、現行の制度では後見を終わらせることはできません。

2026年の法改正で何が変わるのか

こうした使いにくさを見直すため、成年後見制度を改める民法等の改正法が2026年6月に成立しました。主な内容は次のとおりです。

  • 後見・保佐・補助の3つの類型を「補助」に一本化し、必要な権限を個別に決める
  • 遺産分割や不動産の売却など、目的に応じて期間を区切って利用し、必要がなくなれば終了できる
  • 本人の利益のために特に必要なときは、後見人などを交代しやすくする

施行は公布から2年6か月以内とされ、具体的な開始日はこれから決まります。「一度始めたら一生続く」という大きな負担は軽くなる見込みです。ただし、誰を支援者に選ぶかを家庭裁判所が決めるという仕組みは変わりません。親が判断能力を失った後の対応であることにも変わりはありません。

親が元気なうちにできる3つの備え

成年後見は、判断能力が衰えた後に使う制度です。親がまだ元気で、自分の意思をはっきり伝えられるうちなら、家族が財産を管理できる仕組みを自分たちで選んでおくことができます。

方法できること誰が管理するか
家族信託・未来信託預貯金や不動産の管理を、元気なうちに家族に託す。認知症になっても、契約で決めた範囲で家族が管理・売却できる託された家族(ご自身で決められる)
任意後見契約判断能力が衰えたときに備えて、後見人になってもらう人をあらかじめ契約で決めておくご自身で選んだ人(家庭裁判所が選任する後見監督人が監督)
遺言書亡くなった後の財産の分け方を決めておく遺言執行者

特に家族信託は、申立てのきっかけでいちばん多い「預貯金の管理」や、自宅・賃貸物件などの不動産の管理に向いています。信託した財産は、親が認知症になった後も、契約の範囲内で家族が管理や売却を続けられます。

当事務所では、家族信託をより広く「家族の未来のために財産を託す仕組み」ととらえた未来信託の考え方も取り入れています。遺言書や任意後見と組み合わせて、ご家族の状況に合った形をご提案しています。

「16.4%」という数字は、何も準備しないまま親が判断能力を失うと、家族が財産の管理に関われなくなる可能性が高い、ということを示しています。備えられるのは、親が元気なうちだけです。

まとめ

  • 令和7年に成年後見人等に親族が選ばれたのは16.4%。8割以上は専門職
  • 後見人を決めるのは家庭裁判所で、家族の希望どおりになるとは限らない
  • 専門職の後見人には報酬がかかり、家族のための財産の使い方は基本的にできない
  • 2026年の法改正で期間を区切った利用などが可能になるが、施行はこれから
  • 親が元気なうちなら、家族信託・任意後見・遺言で、家族が関われる仕組みを選んでおける

「うちの場合はどの方法が合うのか」「親にどう切り出せばいいか」といったご相談もお受けしています。家族信託・未来信託については家族信託・未来信託のご相談のページで、内容と料金をご案内しています。お気軽にお問い合わせください。

出典:最高裁判所事務総局家庭局「成年後見関係事件の概況(令和7年1月〜12月)」。法改正の内容は2026年6月成立の民法等の一部を改正する法律に基づきます。施行日などの詳細は今後の発表をご確認ください。

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エフアイ法務行政書士事務所
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